【AI ビジネス活用】 AI プロジェクトを進める上で大切な2つの軸

1. AI プロジェクトを企画する時は、ビジネス課題から

AI についての研修を行っていると、このような声を聞くことが多いです。

A さん

「プロジェクトを進めていく手順は分かったけど、本当に効果が出るのか未知数だ・・・」
「自社のビジネスの中で、効果が大きい分野からAIを導入するのか、それともすぐにできそうな現実的なところから成功事例をつくるか?」

B さん

前回の記事では、AI プロジェクトの概要や心構えについてお伝えしました。重要なポイントは「ビジネス課題を考える際には、課題解決のインパクトまで考える必要がある」ということでした。

ビジネス課題から出発して解くべき課題が明確になり、もしも AI を使うことが有効という結論になれば、具体的な AI の要件定義に入ります。

この時、AI プロジェクトの成否を見極めるために大切な 2 つの指標について今回はお伝えします。

2.AI企画の具体策で必要な視点

AI を導入すれば、価値がどんどん上がるのか?答えは No !

AI を「正しい課題」に使えば、人間よりも高い精度が出る。もしくは、AI の判断によって人間がこれまで気づかなかった知見が得られる。こういったイメージをもつ方も多いのではないでしょうか?

確かに、病気の画像診断では人間の医師の精度を上回ったものもありますし、新型コロナウィルスのワクチン開発を加速させたことにも AI は一役買っています。

しかし、正しい課題に AI を活用するだけでは不十分です。課題解決に「必要な」 AI の精度というのも重要なポイントになります。

ポイント

AI プロジェクトの価値は、AI の精度と密接に関わっている

AI が絶対に正しい答えを導き出せるわけではないことは、皆さんも同意だと思います。それに加えて「精度が出れば出るほど成功に結びつく」わけではない、というのが今回のポイントです。
AI の精度と創出するビジネス価値という 2 軸でビジネスモデルを捉えることで、プロジェクトを進めるか/進めないのかの判断の一助となります。

※弊社会長の吉崎の記事もご参照ください。

参考
機械学習を使った事業を成功させるために必要な考え方や人材、フェーズとは?

3.実例で企画の類型を知ろう

それでは、AI の精度と創出するビジネス価値という 2 軸で、実例を考えてみましょう。

① 坂道型(あまりない)


まずはイメージしやすい例として、精度と価値が比例する「坂道型」です。
その場合は、開発予算と精度向上についてのデータエンジニアリングやモデル構築が鍵となります。加えて、モデルを成長させ続けるための再学習のシステム構築で安定した成果を出せると考えられます。
ただし、この直線の傾き具合(精度を上げるのに伴って、どれだけ価値が向上するか)は、ビジネスモデルやフェーズによって異なり精度と価値の両方を伸ばし続けるのは難しい場合が多いです。

② 富士山型(自動運転や創薬など)


次に、富士山型のように精度が向上しないと価値が生まれにくいものもあります。自動運転のようなものはイメージしやすいと思いますが、精度が低いうちは価値を生むことはできません。事故のリスクがある自動運転には誰も乗りたいと思いませんね。
しかし、自動運転の精度が 98 %のように、極めて人間の代替ができる(もしくは人間の能力を拡張できる)場合は、一気に価値が高まると考えられます。

③ S 字型(画像診断、検索、ピッキング)人間の能力を拡張


次は、ある一定の人間の精度を超えると価値が生まれるビジネスモデルです。例えば、病気の画像診断 AI や裁判の判例分析の AI などは、人間の判断の精度を超えるものが生み出されたというニュースも、耳にしたことがあるでしょう。

これらのプロジェクトを考える際に大切なのが、どのくらいの精度が必要なのか?という視点です。人間の方が精度を出せているのであれば、それはわざわざ AI で解くべき課題とは言えません。逆に、人間の精度を超えるものは(開発と運用が可能であれば)積極的に使うことで、価値を生めるとも言えるでしょう。

※注意 低い s 字型(メールの自動仕分け、データの自動収集や計算など)人間の能力の代替


先程の例と似ているのが、低い s 字型のビジネスモデルです。こちらの場合は、精度が高くなくともある程度の成果が見込めるが、精度を向上しても価値は向上しないものと考えられます。
例えば、人間の単純作業を自動化するものが考えられます。迷惑メールの分類などは、人間が行わなくても良い処理であり、なおかつ精度を向上させ続けても価値は向上しません。

こういったプロジェクトでは、必要最低限のビジネス価値を想定しておいて、開発コストを定める必要があります。また、AI で自動化する部分と人間が行う処理の棲み分けも、定める必要があります。

④ プリン型(原発のロボットアーム、ドローンの自動制御)人間の能力を補完


最後に、機械が解くことで価値を生むようなプロジェクトになります。価値の上限は図で示すほど高くはないかもしれませんが、人間では不可能である内容と考えるとイメージできるのではないでしょうか。

極度の高温や低温での作業、高所での高圧電線の保全管理や狭所、原子力発電所など、人間の活動が不可能であったり制限されたりする前提であるものに使われています。ロボティクスや強化学習という形での実用例が多いです。

4. まとめ

いかがだったでしょうか?今回は AI プロジェクトの要件定義として、ビジネス価値と精度という2つの軸で考えてきました。
皆さんが今後ビジネスアイディアに AI を使いたいと考える時、もしくはプロジェクトの要件について考える際に、ぜひ今回の考え方を活用いただければと思います。

ポイント

AI プロジェクトを考える際は、精度と価値の 2 軸で考えよう

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